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山田カレンさんの70,000hit目前企画!!で小狼×さくらで甘々をリクエストしました。後、前回の記事で文章がオーバーしてしまったので、この記事に続きを載せさせて頂く事にします。*この小説は大切な頂き物なので、お持ち帰りはご遠慮下さいませ。
「いらっしゃいませ~。ご注文をどうぞ~」
眩しい程のスマイルに、さくらも笑顔を返す。ずらっと並んだ様々なドーナツを見つめて、端から選んで行く。
手もとのキャリーケースからそわそわとする気配が伝わってくる。興奮して声などあげないうちにと、さくらはどんどん注文していく。
「エンゼルクリームと、ふわふわカスタードと、クッキードーナツと、ダブルチョコレートと・・・」
「ストロベリー生ドーナツと、抹茶ショコラと、ハニーディップ、あとこっちのミニミニドーナツ六個入りも!」
どんどんトレイに積み上がって行く。色とりどりのドーナツ達。さくらはキラキラした目でお会計をして、少し重いトレイを手に、端の方の席に腰を下ろした。
キャリーケースから顔を出して、いまかいまかと待っているケルベロスへと、こっそりドーナツを渡した。
さくらも、小さな口でかぶりつく。甘くておいしいドーナツに、心も表情もやわらかくなる。
(おいしー・・・)
表向きには一人だから、声には出せない。さくらは一つ目を平らげて、アイスティーを一口。ふぅ、と息を吐く。
そして。テーブルの上にある携帯電話に、目をやる。
ランプは、光ってない。
(そうだよね。まだ、お仕事中・・・だよね)
また一つ、かぶりつく。ケルベロスが「次!」というように手を出しているので、そちらにも一つ渡してやる。
砂糖の甘さと、ふわふわの生地が美味しい。さくらの表情が、また和らぐ。
チラ、と。携帯電話を見る。期待しては、凹む。
目の前のドーナツを平らげながら、さくらの心は幸せと落胆を行ったり来たりする。
小狼と一緒にいられない寂しさを、ドーナツの美味しさで紛らわせている。
ぽっかりと空いた心の穴を埋めるように、ひたすらに甘いものを口にして。美味しい、幸せと、暗示をかけるように。
(でも、本当は。全然埋まらないの・・・)
目の前には、誰もいない。
いつもなら、小狼が笑ってこっちを見ている。美味しそうに食べるさくらを見て、幸せそうに微笑んでいる。
「美味しいね」って、一緒に食べたい。
ここに、今。あなたにいてほしい。
―――ブー、ブー、ブー。
急に、現実に引き戻された。
テーブルに置いてあった携帯電話が、小刻みに震えている。着信を知らせるランプ。画面に表示された名前に、さくらは衝動的に手を伸ばした。
(小狼くん・・・!)
―――ピッ。
『・・・さくら?今、家にいるのか?』
待ち望んだ、彼からの連絡。声を聞いて、さくらは泣きそうになった。
しかし次の瞬間、焦る。
(ドーナツ、口いっぱいに頬張っちゃった・・・っ!!)
タイミングが悪い事に、喋れない程に口の中にドーナツがあった。電話に出る前に飲み込むとか、そういう判断が出来る程余裕がなかったのだ。
『さくら?どうした?』
急いで飲み込む。途中、喉に詰まりそうになって、急いでアイスティーを口に入れる。
『なにかあったのか!?』
電話の向こうでは、なにやら激しい誤解が起こっている。早く答えなきゃ。そう思って、さくらは慌てる自分を落ち着かせる。
だけど。
今度は、勝手に涙が出てきた。色んな気持ちがぐちゃぐちゃになって、泣けてくる。
寂しかった気持ちも、怒っていた気持ちも、幸せだった気持ちも。わけがわからなくなって、さくらは嗚咽を漏らす。
『さくら、泣いてるのか・・・!?なにがあった!?』
電話越しに、小狼の焦った声が聞こえる。
ドーナツは全部飲み込んだけれど、涙で声が出なくなった。こみ上げる嗚咽を堪え切れない。苦しい。
『・・・今日、一緒にいられなかった事。怒ってるのか・・・?』
沈んだ声音。小狼も、気にしてくれていた。それは嬉しい。素直にそう思える。
だけど、その言葉で思い出してしまった。放っとかれて寂しかった気持ち。我慢していた気持ち。
小さな燻りが、心に生まれて。さくらは、自分でも思いがけない言葉を口にしていた。
「うわき・・・してた・・・」
『・・・・・・浮気!!?』
「お返し、だもん・・・」
ひく、と嗚咽交じりにそう言うと、電話の向こうは途端に静かになった。
困っているのか。怒っているのか。
(どっちでもいい。私の事で、少しでも悩んでほしい・・・)
自分でも意地悪だと思うけれど、止められない。さくらは流れる涙を拭って、小狼の答えを待った。
しかし、次の瞬間。
キャリーケースから飛び出した橙色の相棒が、携帯電話を奪い取って思い切り叫んだ。
「駅前に新しく出来たドーナツ屋にいるでっ!!早く来んと、小僧の分も全部わいが食ってまうからな―――!!」
「けっ、ケロちゃんっ!!」
―――ブツッ。
そこで、通話は切られた。
さくらはケルベロスの口を慌てて塞いで、その時に携帯電話を落としてしまった。その間に、小狼の方から切られていた。
幸いな事に、ケルベロスの存在は気づかれなかったようだ。何事かと目を向ける人達に「すいません」と愛想笑いをして、さくらは逃げるように席を立つ。
残ったドーナツは先日と同じように、お土産用に包んでもらった。
熱の冷めやらぬ頬を抑えながら、家への道を早足で歩く。途中、キャリーケースから控えめな声で、ケルベロスが話しかけてきた。
「待ってないでええんか?多分、小僧急いでこっちに来とるで!?」
「・・・っ、だって、私バカな事言っちゃったもん・・・!小狼くん、絶対に怒ってる!!」
「ほんなら、尚更会わんとあかんやろ」
信号が赤になる。日曜日の駅前は、なかなかの混雑だ。信号待ちの人混みの中で、さくらはこみ上げる涙を拭う。
逃げてもどうにもならないことは分かってる。だけど、会うのがこわい。自業自得だけど、今更になって自分の言った事を激しく後悔していた。
(小狼くんを、困らせたかった。私の事いっぱい心配してほしかった、なんて。・・・子供みたいな我儘だ・・・)
自己嫌悪で、泣けてくる。
信号が、青に変わる。
歩き出す人の波に押されるように、足を踏み出した。
その時。
(・・・!!)
人混みの中で、彼を見つけた。こちらへと迷いなく向かってくる。
顔は、少し怖い。額には汗が浮かんでる。スーツ姿で、仕事場からそのまま来てくれたんだろうと分かった。
キャリーケースから、小さく「はやっ」という声が聞こえた。
小狼は、横断歩道の真ん中で、さくらの腕を掴む。戸惑い何も言えないでいると、そのまま強く手を引かれ連れて行かれる。
人通りの多い通りから、路地裏へと入る。
周囲に人がいない事を確認して、小狼が結界の呪文を発動させた。
他の誰にも見つからない、切り離された空間で、二人。―――否、二人と一匹。
小狼は真っ直ぐに、怖い程の迫力で見つめる。逸らす事も許さないような強い眼差しに、さくらは息をのんだ。
「浮気したって・・・?」
低い声の問いかけに、さくらはパッと顔を逸らす。だけど小狼の手が顎を掴んで、無理やりに上向かされた。
(・・・やっぱり怒ってる!!)
ぎゅっと目を瞑って、ふるふると首を横に振る。
小狼の気配が、動く。
あ、と思った一瞬で―――唇を塞がれた。
「・・・んんっ」
荷物が落ちる音。ケルベロスが入っているキャリーケースと、ドーナツの入った袋が同時に地面に落ちた。
さくらは抵抗しようと顔を振るが、小狼の手が強く抑えていて逃げられない。
唇を食むように、何度も口づけられる。
長いキスのあと、やっと解放されて。乱れた吐息に、頬が熱くなる。
小狼は、舌で唇をなぞって、笑った。
「・・・甘い」
その言葉の意味を。
一拍置いて悟って、さくらは真っ赤になって口元を抑えた。
(ドーナツの砂糖だ・・・!ずっと口についたままだったの・・・!?)
「・・・で?誰と浮気したって?」
小狼は、もう怒っていなかった。どこか楽しそうに笑って、さくらを見ている。きっと最初から、彼には嘘だと分かっていたのだろう。
恥ずかしくて、悔しくて。ぼろぼろと涙が零れるのも構わず、さくらは小狼の胸を叩いた。
「ドーナツと浮気してたんだもんっ!!小狼くんが・・・お仕事と浮気ばっかりするからでしょ!?」
「う、浮気って・・・」
「小狼くんより、ドーナツの方が甘くて幸せなのっ!小狼くんなんか・・・小狼くんなんか・・・っ」
―――続く、『キライ』の言葉は、どうしても言えない。嘘でも、やっぱり言いたくない。
子供のように泣くさくらを、小狼は呆れたように、愛おしそうに見つめて。強く抱きしめた。
「・・・敵わないな、本当に」
「うっ、うぅ・・・!小狼くんの、ばか・・・」
「ごめん。ごめんな」
宥めるように背中を撫でる大きな手。胸に顔を埋めて、小狼の心臓の音を聞いているうちに、だんだんと落ち着いてきた。
「ばか」と「ごめん」を、何度も繰り返す。そうしてさくらの嗚咽も、小さくなってきた頃。
小狼の手が、さくらの涙に濡れた頬を撫でて。優しくキスを落とした。
額と額をこつんと当てて、至近距離で小狼が言う。
「・・・焦ったんだぞ。これでも」
「最初から、嘘だって分かってたんでしょ?」
「・・・分かってた、けど。それでも焦るだろ。ここに来る間にも、想像だけでどうにかなりそうだったんだから」
言いながら、唇に頬に、何度もキスを落とす。
「・・・困らせて、ごめんね?」
「ったく・・・。俺を困らせられるのなんて、世界でさくらしかいないんだからな」
言葉とは裏腹に、小狼はなぜか嬉しそうに笑う。
さくらの唇を柔く噛むように口づけて、真剣な顔で言った。
「嘘ついてもいいし、我儘言ってもいい。・・・そのかわり、一人で我慢して泣いたりするな。その方が辛い」
小狼の言葉に、さくらはまた涙を滲ませる。知世が言っていた事の意味を、今更に理解する。
―――『さくらちゃんからの我儘なら、李くんはきっと喜びます』
涙をこぼさないようにして、さくらは精一杯に笑顔を見せる。
小狼に思い切り抱きついて、その耳元で内緒話のように囁いた。
「・・・今度からは、我慢する『嘘』じゃなくて、甘える『嘘』をつくね」
ややあって。
さくらは思い出す。もう一人、ここにいる存在を。
「けっ、ケロちゃん・・・!!」
おそるおそる、キャリーケースを覗いて。さくらは予想外の光景に、固まった。
小狼に捕まった時に、お土産用のドーナツの袋を落としていた。それがちょうどケルベロスの目の前に落ちて―――。
たくさんあったドーナツは、今は膨れたケルベロスの腹の中。
満足そうに寝息を立てる相棒に、さくらはワナワナと拳を震わせた。
「ケロちゃんっ!!私のドーナツ・・・!!全部食べたわね―――!?」
さくらの怒号に飛び起きたケルベロスは、マズイという顔で目を逸らした。
「楽しみにしてたのにっ!酷い―――!!」
「ええやないかっ!ドーナツはみんなのもんやっ!わいの前に落ちてきたんやからわいのもんや―――!!」
二人の終わらない戦いに、小狼は溜息をつく。
「俺も食べたかった・・・」
此度さくらの浮気相手となった、憎らしくも甘く美味しいドーナツ。
笑顔で二人が頬張る事になるのは―――また数日後のお話。
End
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HN:碧 茶々(みどり ちゃちゃ)(別館2件は心美名義で。)
出身地:大阪府東大阪市(完全な関西人じゃないです。)
年齢:20代
血液型:A型
星座:山羊座
干支:寅年
身長:149cm(身長低いな。)
誕生石:ガーネット(柘榴石)
誕生守護石:オニキス(黒メノウ)
好きなパワーストーン:ローズクォーツ(紅水晶・紅石英)
好きな食べ物:チョコレート,チョコレート菓子,洋菓子,和菓子,甘い料理,辛い料理,酸っぱい料理,こんにゃく,鮭,豚肉,鶏肉,寿司,中華料理など
好きな飲み物:コーヒー(昔より、平気になった。),抹茶,紅茶,ハーブティー,はぶ茶,緑茶
苦手な食べ物:牛肉
好きな男性のタイプ(出会いは求めてません。):駄目な事は駄目って、言ってくれる人。例として、コーヒーで苦そうな味な物をあたしが選んだ場合、「俺がそれを頼むから、お前が選ぶなよ。」って言ってくれる方が良いです。ジャニーズアイドルで理想に近いのは、TOKIOの末っ子の松兄と智也です。後、嵐の相葉ちゃんかなぁ!?
好きなジャンル:ファンタジー,ラブコメ,ミステリー,サスペンス,オカルトなど
好きな漫画:少女漫画(カードキャプターさくら,学園アリス,好きです鈴木くん!!,セーラームーンシリーズなど),少年漫画(エデンの檻,金田一少年の事件簿,國崎出雲の事情,女王蜂,名探偵コナン,境界のRINNE,クロスゲーム,ひぐらしのなく頃に,ロザリオとバンパイア,BLOODシリーズ[BLOOD+・BLOOD-Cなど],ポケットモンスターシリーズなど)
好きな小説:放課後シリーズ(探偵の女の子が三原千春みたいな子です。),少年探偵セディシリーズ(主人公が江戸川コナンみたいな女の子です。)など
好きなドラマ:恋して悪魔,花より男子,金田一少年の事件簿など
好きな女優・男優:中山優馬(アイドルで、パーソナリティーもやっている。今の優馬君も、幼い頃の優馬君も、大好きです。),小池徹平(ミュージシャンでもある。),仲間由紀恵,松嶋奈々子,知念侑李(優馬君と同じジャニーズのユニット3人組のNYCの子です。侑李君は天使だとあたしは思います。因みに、優馬君は小悪魔だと思います。で、山ちゃん(山田君)は両方だと思います。),あっちゃん(前田敦子),ゆうこちゃん(大島優子)など
好きなアイドルグループ:嵐(基本、全員好きです。),TOKIO(TOKIOでお気に入りは松岡さんと城島さんと長瀬君),KinKi Kids,V6,中山優馬w/B.I.Shadow,NYC(NYCでお気に入りは優馬君と侑李君),AKB48(最近、お気に入りはAKB48のメンバーで、演歌歌手でもある岩佐美咲ちゃん)など
好きな声優:くまいもとこ,松本梨香,坂本真綾,高山みなみ,林原めぐみ,折笠愛,佐藤ゆうこなど
好きな歌手:坂井泉水(ZARD),倉木麻衣,GARNET CROW,ゆず,竹内まりやなど
好きなゲーム:ポポロクロイス物語(主人公が江戸川コナンみたいに乗り物の運転が得意な木之本さくらみたいな天然王子様),マザー2,ポケットモンスター,ゼルダの伝説など
マイブーム:少年舞妓・千代菊がゆく!(最終回が気になります。)