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 山田カレンさんの企画で卒業をテーマに小説をリクエストしました。タイトルは<翼-後編->です。*お持ち帰りは御遠慮下さい。
 

拍手[3回]


<翼-後編-> 山田カレン

今日の朝は、目ざましが鳴る前に目が覚めたんだ。
カーテンから漏れる光が凄く眩しくて、ああ、晴れたんだなぁって少し嬉しくなった。
だって、最後の日だから、晴れていたほうが寂しくないでしょう?
 
 
 
 
 
 
 -後編-
 
 
 
 
 
 
いつもの帰り道。今日はバスに乗らないで歩いて帰ろうと、提案したのはさくらだった。
まだ暖かいとは言えない風に思わず身震いすると、小狼が正面に回ってさくらの首元に手を伸ばす。
桃色のマフラーをいったん解いて、きっちり巻きなおす。当たり前のようにされるその手を、さくらはずっと見ていた。
きゅ、と結び目を作って、再び歩き出す。先ほどより暖かくなった首元に顔を埋めて、さくらは笑う。
「へへ、あったかぁい」
「ほら、さくら。早く帰らないと風邪ひくぞ」
なんとなく進んでしまうのが嫌で、わざと遅く歩いた。時々立ち止まってはつまらないことで小狼を呼びとめて、その歩みをとめた。
小狼も咎める事はせず、それに付き合う。
「あ、ペンギン公園!懐かしいねー!小狼くん、ちょっと寄って行こうよ」
「・・・いいけど、寒いぞ?」
「大丈夫!」
子供のように走って、久しぶりにペンギン大王に登る。当たり前だが小学生の頃とは違い、簡単に登れてしまう。
楽しそうに滑り台を滑るさくらに手を差し出して、小狼も笑う。その手を取って、今度はブランコへと引っ張っていく。
「わぁ、ギシギシ言うよー」
「結構ボロくなってたんだな」
鉄が軋む音を鳴らしながら、さくらはブランコを漕ぐ。隣りのブランコに座って、小狼はたださくらを見ていた。
「・・・懐かしいな。ここで、さくらが泣いてたんだっけ」
キィ、とブランコをゆっくり揺らしながら、小狼が呟く様に言う。さくらは漕ぐ勢いを少し落として、小狼の言葉に頷く。
「うん。それで、小狼くんが慰めてくれたんだよね」
「何も出来なかった気がするけどな・・・」
「そんなことないよ。あの時、すごく嬉しかったもん」
ざ、と足で動きを止めて、さくらはブランコから降りた。その足で、小狼の前に立つ。
「・・・色々あったね」
「うん」
見上げる小狼に覆いかぶさるように、さくらは彼を抱きしめた。小狼の頬を、伸びたさくらの髪がくすぐる。
そのまま、お互いの体温を感じながら、目を閉じた。
瞼の裏で蘇るのは、思い出。
「小狼くんは最初、すごく私の事を嫌ってたよね」
「嫌ってたんじゃない。ただ・・・敵だと決めつけていただけだ」
「そうそう。最初はライバルだったんだよね。でも途中から、私の事いっぱい助けてくれるようになって・・・」
「さくらが頼りなさ過ぎて、いつのまにか放っとけなくなってたんだよ」
「いつのまにか、一緒にいるのが当たり前になってた。近くにいないと、寂しい気持ちになって、泣いちゃいそうだった」
「・・・そうだったのか?」
「ふふふ、そうだったんだよー」
首元にかかる、さくらの息がくすぐったい。彼女が今どんな表情をしているのか、小狼は気になった。
依然小狼に抱きついたままで、さくらは言う。
「あの時、小狼くんが香港に帰る事になった時も、寂しくて悲しくてどうしたらいいのか分からなくなった・・・」
静かに話すさくらの声は、驚くほどにいつもどおりだった。小狼は言葉ひとつも逃すまいと、その声に耳を傾ける。
「それでも信じてたから・・・、待つ事が出来たの」
力が緩まって、ゆっくりとさくらが顔をあげる。そこにあったのは。
誰よりも愛おしい、彼女の笑顔。
それが一瞬だけ歪みそうになるのを、小狼は見逃さなかった。さくらはそれでも気丈に笑みの形を作って、力強く言う。
「だから今度も、大丈夫」
泣きそうな表情を必死に抑えて笑う姿に、小狼の体が無意識に動いた。勢いよく立ちあがった為に、ブランコがキィと音をたてて揺れる。
目の前の女の子が、いつもより小さく見えた。その体を引きよせて、力強く抱きしめる。
 
 
 
告げたのは夏だった。
さくらの進路が何とか決まり、本格的にはじめた受験勉強に付き合う日々の中で、タイムリミットは着実に迫っていた。
熱く気だるい空気の中、小狼の言葉に、さくらの時が止まった。
『高校を出たら、香港へ戻る―――』
 
 
 
最初から、期限付きだった。


猶予期間は、卒業まで。だから―――今日が最後の日。
「・・・もっと早く言わないとダメだって、分かってたんだ」
あの夏の日の暑さと、陽炎に揺れるさくらの表情が、頭から離れない。
「ごめん。でも、言えなかった」
さくらの頬を両手で包んで、互いのおでこをコツンと合わせる。小狼の手を、零れた涙が濡らしていく。
静かに泣くさくらを見て、小狼の心は痛んだ。
それでも、その涙を止める術を持っていない。自分の無力さに怒りがこみ上げて、無意識に歯を食いしばった。
「ごめん、さくら・・・!」
小狼の言葉に、さくらは首を振る。堪え切れない嗚咽が、静かな公園に響く。
自責の念にかられる小狼の苦渋の色を見て、何度も首を振る。違う、と繰り返す。
「私が泣くのは、小狼くんが苦しんでるって分かるからだよ・・・?」
あの時と同じだ。小狼は酷く辛そうで、ひたすらに自分を責めていた。泣けない彼の心が、さくらの心をも苦しくさせた。
「小狼くんはずっと知っていて、いつかこの日が来ると分かっていて、それでも私の傍にいてくれた。ずっと私の事だけを考えてくれてた」
一番辛い事は、離れることじゃない。
「だから、もう自分を責めないで――・・・!」
涙声で必死に紡がれる言葉が、小狼の心の闇を取りはらっていくようだった。
自分の為に泣いている姿が、その涙が、心を震わす。狂おしいほどの愛しさが溢れた。
それと同時に、どこか冷静な頭で思う。
(・・・そうだ。怖いのは、距離が離れてしまう事じゃない)
嗚咽に震えるさくらを、優しく抱きしめる。
抱きしめて感じる彼女の形を、感触を、体温を、匂いを、いつまで記憶していられるだろう?
もしも互いを無くしたら、きっと壊れてしまう。
さくらを失ってしまったら、自分がどうなってしまうのか分からない。
―――本当に恐いのは、そんな自分自身の心だ。
「さくら、聞いて」
「・・・ふ、」
―――伝わるだろうか。自分の心、体、未来。すべてが唯一人にだけ、向かっている事。
「今まで一緒にいてくれたことに、感謝してる・・・」
猶予期間の終わりの日。
新しく始まる未来、それに進むための最後の日。
この日を迎えることに怯えながら、それでも心のどこかで、待ち望んでいたのかもしれない。
「俺は、これからの一生を、さくらと一緒にいたいと思ってる」
今は離れても。未来で、二人の人生が交わればいい。
―――だから。
 
 
「さくらのこれからの一生を、未来を、俺にくれないか」
 
 
「―――どうして、言っちゃうの・・・!?」
「え・・・」
しばしの沈黙の後。キッ、と顔をあげて、涙目でさくらは吠えた。
「どうして先に言っちゃうの?わた、私が・・・、今日言おうと思って、言ってやるって思って、思ってたのに、どうして小狼くんが先に言っちゃうの!?」
「ちょ、さくら、落ち着け」
「あの夏の日に決めたのに!願掛けで髪を伸ばして、この日の為に頑張ってきたのに・・・っ」
小狼は、さくらの怒っている理由がわからなくて戸惑う。自分の腕の中で取り乱す彼女をなんとか落ち着かせようと柔らかな髪を何度も撫でた。
怒っていた表情がくしゃりと歪んで、ボロボロと新しい涙が幾つも零れる。
「―――・・・っ、ずっと、ずっと一緒にいる為だったら、少し離れるくらい平気だもん・・・!さくらはそれまで一人で頑張って、小狼くんにふさわしい女の子に
なるから、だから」
だからいつか迎えに来てね―――。
笑顔でそう言う計画だった。なのに。今の自分はグチャグチャに泣いて、喚くみたいに怒って、小狼を困らせている。
ただの八つ当たり。自己嫌悪で俯くさくらを、優しく掬いあげる手。
(あ、・・・ダメ)
そう思うも拒むことなど出来ない。優しく触れる唇に、切なく心は震え、また涙腺が緩んだ。
触れてしまえば、さくらの精一杯の強がりなど、いとも簡単に陥落する。
次第に激しくなる口付け、その合間に、小狼が問いかける。
「さくら、答えて」
「ん、しゃお」
「まだ、さっきの答え聞いてない」
「・・・だっ、て」
先ほど、答えともとれる事を言ったも同然だったのに。それでもさくらの言葉で聞きたい、と意地悪に耳元でもう一度問う。
答えなんて、最初からひとつしかないのに。
 
 
「私の願いは、最初から小狼くんと同じだよ!」
そう言って、小狼の胸に思いっきり飛び込んだ。
それを難なく受け止める。耳元で囁かれた言葉に、小狼は嬉しくて声を出して笑った。
『小狼くんの未来を、私にください―――』
 
 
 
 
 
 
と、その瞬間。
ドッ!と、公園のいたるところから、歓声が響いた。
驚いて固まる二人の目に映るのは、駆け寄ってくるクラスメイト達。女子はおろか男子までなぜか涙ぐみながら歓声をあげている。
「よかったね、さくらちゃん!!」
「ごめんな、俺ら何も知らなくて!」
「おめでとう二人とも!もう、感動しちゃった!!」
「李!お前男だな!式には呼んでくれよ!?」
やんややんやと騒ぎ立てるこの状況、抱き合ったままだと言う事に気づいて、二人は赤くなって慌てて離れる。
なぜこんな事態になっているのか混乱していたら、小狼が後方でこちらを見ている人物を発見する。
「大道寺!どういうことだコレ!?」
知世は困ったように笑う。
「みなさん二人の事が心配で、どうしてもって追いかけてきたんですわ」
「だからって・・・!」
「まぁまぁ李くん!よかったじゃないハッピーエンドで!」
「山崎!お前も止めろよ!」
照れ隠しに精一杯抗議する小狼だったが、もう祝福ムードのこの状態に何を言っても無駄だった。
さくらも顔から火が出そうなくらい頬を紅潮させて、クラスメイトからの熱い抱擁を受けていた。
その中の一人が、一枚の封筒を差し出す。
「これ、大急ぎで現像してきたんだ」
封筒の中身は、先ほど教室で撮った小狼とさくらの写真だった。
写真の中の二人は、優しく、さくらに微笑みかけているように見えた。
「・・・ありがとう、嬉しい」
 
 
 
 
目を閉じて、いつかの未来を思う。
隣りにいるのは大好きな人。私は笑って、その手を引いて走り出す。
迎えにきてくれるのを待ってるだけじゃない。今度は私が会いに行くの。
遠い遠い明日に、この翼を広げて、必ず会いに行くから。
そこにあるのは、幸せの日々であると、信じているから。
「絶対、大丈夫」
 
 
 
End
 
 
頂いた日:2012/04/12

<管理人コメント>

山田カレンさん、お忙しい中、リクエストに答えて下さって有り難うございます。
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プロフィールは旧ホームページから引用*一部変更あり

HN:碧 茶々(みどり ちゃちゃ)(別館2件は心美名義で。)
出身地:大阪府東大阪市(完全な関西人じゃないです。)

年齢:20代

血液型:A型

星座:山羊座

干支:寅年

身長:149cm(身長低いな。)

誕生石:ガーネット(柘榴石)

誕生守護石:オニキス(黒メノウ)

好きなパワーストーン:ローズクォーツ(紅水晶・紅石英)

好きな食べ物:チョコレート,チョコレート菓子,洋菓子,和菓子,甘い料理,辛い料理,酸っぱい料理,こんにゃく,鮭,豚肉,鶏肉,寿司,中華料理など

好きな飲み物:コーヒー(昔より、平気になった。),抹茶,紅茶,ハーブティー,はぶ茶,緑茶

苦手な食べ物:牛肉

好きな男性のタイプ(出会いは求めてません。):駄目な事は駄目って、言ってくれる人。例として、コーヒーで苦そうな味な物をあたしが選んだ場合、「俺がそれを頼むから、お前が選ぶなよ。」って言ってくれる方が良いです。ジャニーズアイドルで理想に近いのは、TOKIOの末っ子の松兄と智也です。後、嵐の相葉ちゃんかなぁ!?

好きなジャンル:ファンタジー,ラブコメ,ミステリー,サスペンス,オカルトなど

好きな漫画:少女漫画(カードキャプターさくら,学園アリス,好きです鈴木くん!!,セーラームーンシリーズなど),少年漫画(エデンの檻,金田一少年の事件簿,國崎出雲の事情,女王蜂,名探偵コナン,境界のRINNE,クロスゲーム,ひぐらしのなく頃に,ロザリオとバンパイア,BLOODシリーズ[BLOOD+・BLOOD-Cなど],ポケットモンスターシリーズなど)

好きな小説:放課後シリーズ(探偵の女の子が三原千春みたいな子です。),少年探偵セディシリーズ(主人公が江戸川コナンみたいな女の子です。)など

好きなドラマ:恋して悪魔,花より男子,金田一少年の事件簿など

好きな女優・男優:中山優馬(アイドルで、パーソナリティーもやっている。今の優馬君も、幼い頃の優馬君も、大好きです。),小池徹平(ミュージシャンでもある。),仲間由紀恵,松嶋奈々子,知念侑李(優馬君と同じジャニーズのユニット3人組のNYCの子です。侑李君は天使だとあたしは思います。因みに、優馬君は小悪魔だと思います。で、山ちゃん(山田君)は両方だと思います。),あっちゃん(前田敦子),ゆうこちゃん(大島優子)など

好きなアイドルグループ:嵐(基本、全員好きです。),TOKIO(TOKIOでお気に入りは松岡さんと城島さんと長瀬君),KinKi Kids,V6,中山優馬w/B.I.Shadow,NYC(NYCでお気に入りは優馬君と侑李君),AKB48(最近、お気に入りはAKB48のメンバーで、演歌歌手でもある岩佐美咲ちゃん)など

好きな声優:くまいもとこ,松本梨香,坂本真綾,高山みなみ,林原めぐみ,折笠愛,佐藤ゆうこなど

好きな歌手:坂井泉水(ZARD),倉木麻衣,GARNET CROW,ゆず,竹内まりやなど

好きなゲーム:ポポロクロイス物語(主人公が江戸川コナンみたいに乗り物の運転が得意な木之本さくらみたいな天然王子様),マザー2,ポケットモンスター,ゼルダの伝説など

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